ミリカンの油滴実験(模擬実験)

【目的】 コンピュータを用いてミリカンの油滴実験を体験し、電気素量の求め方を理解する。

【理論】

小さな球に働く空気抵抗はストークスによって球の半径rと球の速度vに比例することが求められている。 その大きさは空気の粘性率と呼ばれるものをηとして、次式で示される。

空気抵抗の大きさ=6πηrv

また、空気による浮力の大きさはその物体が排除した空気に働く重力と等しいので、半径rの球の場合、空気の密度をσ、重力加速度をgとして、

空気による浮力の大きさ=

である。 今、図のような装置の電極そうの中にアルコールに入れたラテックス球(小さな樹脂の球)を噴霧し、電極間に電場Eを加えて運動させると、最初ごく短い間球は加速度運動をするが、すぐに等速度運動になる。 これは、速度が大きくなると、上に述べたように空気抵抗が大きくなるため、最終的には重力と空気抵抗、空気の浮力、加えた電場から受ける力がつりあった状態になるためである。 この時の速さを終端速度と呼ぶ。 電場の大きさをE,ラテックス球の電荷を−q、ラテックス球の密度をρとするとき、電場の向きを上向きにしたときの(下向きの)終端速度の大きさをv+ と書くことにすればつりあいの式は、

また、電場の向きを下向きにしたときの(上向きの)終端速度の大きさをvと書くことにすればつりあいの式は、

となる。 これらを連立させて解けば、

       

として、v+ v を測定することによって、ラテックス球の電荷qを求められることがわかる。 ミリカンは、X線の照射によって油滴の帯電量を変えながらこの実験を繰り返し行い、qが連続的に変化するのではなく、不連続に変化することを確認し、変化の最小値から素電荷の値を求めた。

【方法】

ここでは上の実験を模擬的に行う。 実際の実験では油滴を目盛りつきの顕微鏡で観測しながら行う。 画面の2本の白線が間の距離1mmの目盛りで、青い小さな点がラテックス球である。 顕微鏡でのぞくと像が倒立するので上下が逆になる。 このアプレットでも上下を逆にしてあるので、上向きに電場をかけたときは実際にはラテックス球は下向きに運動するが、上向きに運動するように見える。 実際には電極にかける電圧も調節するが、ここでは300vのままでよい。 また、実験番号はNormalのままにしておく。

  1. ラジオボタンの電場上向きにチェックを入れてスタートボタンを押すとラテックス球が画面上で上(実際には下)に動き始める。同時にストップウォッチも動き始める。
  2. ラテックス球が下の白線を通過する瞬間にストップウォッチの「Reset」を押すと、ストップウォッチが0になる。
  3. ラテックス球が上の白線を通過する瞬間にストップウォッチの「Lap」を押すと、下の白線を通過した瞬間からの(電場上向きのときの)経過時間 tが記録される。
  4. ラジオボタンの電場下向きにチェックを入れると、ラテックス球が画面上で下向き(実際には上)に動き始めるので、2.と同様に上の白線を通過する瞬間に「Reset」を押すと、ストップウォッチが0になる。
  5. 3.と同様に球が下の白線を通過する瞬間に「Lap」を押すと、上の白線を通過した瞬間からの(電場下向きのときの)通過時間tが記録される。
  6. 再びラジオボタンの電場上向きにチェックを入れ、1.〜5.を繰り返して最低2回づつt tを求め、それぞれ平均を取ってtの平均値とtの平均値を求める。
  7. これらの平均値は白線の間(1mm)を通過する時間なので、上向き電場のときの速さvと下向き電場のときの速さvが計算でき、【理論】で求めた式に代入するとr及びqが求まる。
  8. 全リセットボタンを押し、X線照射ボタンを押すと、ラテックス球の電荷がランダムに変化するので、同じように1.〜7.を繰り返し、最低3つのrqを求める。

【結果】

No.

t(データ)

t

t(データ)

t

v

v

r

q

 

 

             

 

 

             

 

 

             

 

 

             

 

 

             

ただし、η=18.399×106Ns/m2、ρ=1.05×103kg/m3、σ=1.184 kg/m3g9.79722m/s2である。

また、電極間距離は1cm、電極間の電位差は300vである。(電場Eはこれらから求める)

【考察】

  1. 最初のデータを用いて自分でrqを計算せよ。(途中計算も書くこと)
  2. 他の班のデータもすべて記録し、これらのデータ全体を整理して電気素量を求めよ。

<ヒント> 同じような大きさのデータごとに分類し、それぞれの平均を求める。 それぞれの平均の差を取って、それらの最小値を探す。 この時rの値が極端に違うデータは信頼性が低いと考えて取り除く。(Excelなどの表計算ソフトを使ってもよい)

他の班のデータ一覧

r

q

r

q

r

q

r

q

               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               
               

qの値が近いグループごとのデータの平均値の一覧表は各自で作成すること。