理科で利用できるような「マルチメディア」を


大阪府立寝屋川高等学校(大阪府理化教育研究会マイコン部会) 神川 定久

  1. はじめに
    マルチメディアという言葉が使われ出して久しいが、最近になって実際の商品があらわれてきた。 何が本物のマルチメディアかと言う議論はさておき、現在販売されているいわゆる「マルチメディア対応パソコン」は理科で利用しやすいものになりつつあると思える。 これを積極的に利用することを考えるべきではないか。

  2. 標準化されたものを利用しよう
    最近のマルチメディア対応パソコンのハードウエアの規格はかなり標準化されつつある。 従来では独自のADコンバータを作成することが必要であったが、標準の音源ボードを同じような目的で使用することができる。 また、最近導入が広がりつつあるビデオキャプチャーボードを利用すれば動画の取り込やビデオオーバーレイを利用して運動の解析(観察?)を行うことも可能になるだろう。 これらの標準化されたハードを使えば作成したソフトを多くの機種で使うことができる。 最近のWindows等のOSは互換性を保ったままゲームがストレスなくできるようなAPIを組み込むようになった。 この機能を利用すれば機種に依存しない状態でシミュレーションなどを作成することも可能である。 また、標準にしたがってプログラムすれば操作方法も標準化されているので、個別のプログラムに特有の操作方法を教えるといった、理科教育には余分な作業を減らすこともできるのではないか。
    ハード、ソフトともに我々が標準的なものを積極的に使うことによってノウハウが共有できるようになる。

  3. 理科のネットワークを
    最近の機種では通信機能を標準で備えたものも増えてきており、標準でない場合でも高速の(28800bps)モデムが2〜3万円で購入できる。 したがって、通信のネットが整備されれば以前と比べはるかに簡単に通信によって情報を交換できようになる。 これは個人的な例だが、私は東京の都立上野高校の北村先生と商用ネットでメールのやり取りをしている。 このことによって、東京、大阪と距離的には離れていながらお互いに疑問に思ったことを質問することもできるし、知っている範囲の事柄であれば、答えることもできる。 新しいOSを利用してプログラムを組むことは同じ機能をDOSで実装するよりやさしいが、実現する機能が高度になる分複雑になっている。 しかし、標準化されているだけに疑問点も共通しているようである。 このような方法で情報のやり取りをし、ノウハウやプログラムを共有することが必要になるのではないだろうか。 また、現状では研究委員会などで顔を合わさなければ意見を交換することはできないが、パソコン通信を利用することによって恒常的に意見を交換する場を作ることができる。 ハードはこのようなことが可能なレベルに到達しつつある。 後は全体のシステム(例えばネットワークの設置や管理など)と我々の意識の問題であろう。 システムの可能性としては3つあると考えられる。
    • 1つは各都道府県の教育センターが運営するネットワークを相互に接続し、個人がセンターのネットにログインすれば全国にアクセスできるようなシステムを作ることである。 電話代だけですめば我々利用者としては一番ありがたい。
    • 2つめは大手商用のネットワークに物理教育のフォーラムを作っていただくことである。 NIFTY-Serveでは化学のフォーラム、科学のフォーラム、教育のフォーラムなどがあるが、物理教育のフォーラムというものはない。 実際に現在では高校の物理教育の情報をやり取りするにはどこへいけばよいかは容易にはわからない。 加入の為の費用と利用料金は必要だが、だれかがシスオペをしていただければ最も簡単に実現する可能性がある。
    • 3つめはInternetを利用することである。 これは最も簡単に世界中とつなぐ方法であるが、個人として接続するにはある程度の設備が必要であり、商用ネットと比べると若干負担が大きい。 ソフトについては例えばOS/2ではほとんど標準でTCP/IPプロトコルレイヤに相当するものやWWWブラウザもアクセサリとしてついているので、Windowsも同様に対応すると思われる。 したがって、学校や教員について公的な機関がプロバイダーのような役割をしていただければInternetを利用することも簡単であろう。 ただ、fj.educationなどのニュースグループはあるが、物理教育のニュースグループといったものはやはり無いように思える。 大学と高校が意見を交わすのであれば、fjなどに物理教育のニュースグループを開設するのも良いかもしれない。
      ついでに言わせていただければ、日本国内ではホームページがあまり充実していないことも問題である。 例えば、大学がサーバを立ちあげホームページを開設している所も多いが、現状では個人の趣味で実験的に運営しているようなものや、アメリカの施設へのリンクをメインにしたものもたくさんある。 例えば、高校生向けの研究室の紹介や、高校生向けの現代物理講座といったメニューを各大学で用意すれば、将来WWWの利用が普及したとき物理教育や、進路の選択に効果的に使えるのではないか。 ホームページを開設するだけなら非常に簡単である。 しかし、充実したホームページは一朝一夕には出来上がらない。 今から準備をしていく必要があるだろう。
    このようなシステムのどれかがあれば、常に全国の先生方と情報の交換ができる。 それが可能になれば同じような研究をしながら互いに情報が交換できないといった現状を変えることができる。 このようなシステムの中で可能なものをできるだけ早く作っていただきたい。 また、我々もこのようなものに積極的に参加していく意識が必要であろう。

  4. ソフトの充実を望む
    現在のハードはCD-ROMを装備することは当然になっている。 ただ、現在では教材となるようなCD-ROMの出版は少ない。 理科の授業においてはビデオを最初から最後まで見るといった形式よりは効果的な映像を必要なところで少しだけ見せるといった使い方の方が一般的であろう。 例えば、かつてループフィルムという形で短いクリップ集が発売されていたが、このようなものはランダムアクセスのできるLDやCD-ROMにすることで有効に利用できるであろう。 このような映像は著作権によって保護されており個人がコピーすることはもとより、編集、改変することも許されていないはずである。 著作権を持った出版社がこのようなソフトの提供を考えていただきたい。 また、データを扱うものはCD-ROMの形で提供されていれば、検索することもたやすく、他のソフトでグラフ化することによって別の見方ができるなど新しい利用方法も考えられる。 理科年表は11月に70年分を収録したCD-ROMを出版するそうである。 他の同じようなデータはぜひともCD-ROMとして販売していただきたい。

  5. おわりに
    パソコンの能力はどんどん向上している。 我々もそれを積極的に利用していく姿勢が必要ではないか。 そのためにも公的な機関や、学校の設置者が環境を利用しやすく整えていただきたい。

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