理科教育におけるJavaとネットワーク利用の可能性

(96年度全国理科教育大会東京大会意見提示原稿素案−2月7日版)

大阪府立寝屋川高等学校(大阪府理化教育研究会マイコン部会) 神川 定久


  1. はじめに(Javaとは)
     Javaは元々家電製品(VCR,TV等)をコントロールする目的でSunMicrosystemsによって作られた言語である。  家電製品はコストパフォーマンスの追求のためにコンピュータチップを変える可能性があり、従来の製品とも長期間互換性を保つ必要があるので、Javaはプラットフォームに中立な言語にすることを目標として開発された。

     その後、多くの種類のコンピュータが接続されたネットワークの発達に伴って、 SunMicrosystemsはプラットフォームに中立な言語をネットワーク用の言語として利用することを考え、Javaを用いて「HotJava」と呼ばれるブラウザを開発するとともに、Java言語をそのブラウザ上で実行できるようにした。  現在ではHotJava以外にNetscapeNavigator2.0がJavaをサポートしており、Microsoft、IBM、富士通等のメーカーもJavaのライセンスを取得している。  したがって、今後Javaは多くのブラウザで実行できるようになると考えられる。

  2. 理科教育での利用について
     これまでのコンピュータの使い道としてはシミュレーション、実験道具、CAI等があった。  これらの中で、少なくとも実験道具としての利用以外ではJavaが有効に使える。  まず、JavaでもこれまでBasicやC++等で組んでいた簡単なシミュレーションであれば同様にプログラムを組むことが可能である。

     実験的に、万有引力によって運動する物体のシミュレーションウェーヴマシンのシミュレーション縦波のシミュレーションを作成してみたが、十分に実用になる速さで動作することが確認できた。  この種のプログラムは高校の物理で用いるシミュレーションの基本であるから、これ以外のプログラムでもほぼ同等のパフォーマンスが得られると考えられる。
     また、アニメーションの例として水面波の干渉の様子を表示するプログラムを作成してみた。  このプログラムは基本的にSunMicrosystemsによってサンプルとして提供されているものに少し手を加えただけである。  このプログラムの場合、画面を12枚ロードしているため、画面が安定するまでに時間がかかるが、いったんロードが終了すると、実用になる程度の速さで表示することができた。
     これ以外に、説明のための図の例として凸レンズの像のできかたを作図するプログラムと、光の三原色の混合を試してみるプログラムも作成してみた。  以上のようなプログラム(アプレット)を試作した結果Javaを用いると比較的簡単に実用になるプログラムを組むことが可能であることが分かった。

     さらに、Javaの特徴として、このようなアプレットをHTMLで記述したページの中に埋め込むことができる点が上げられる。  HTMLはその名の通り簡単なハイパーテキストであるから必要であれば用語の説明や、関連項目にジャンプするためのタグを埋め込むことができる。  したがって、単にプログラムを提示するのではなく、解説の一部としてプログラムを提示したり、必要であればそのプログラムに関しての説明を入れることも可能である。  つまり、プログラムを出版物の中の図のように扱うことができるのである。

     このような機能の一部はこれまでもいわゆるオーサリングソフトで提供されていたが、一般にそのようなソフトは高価であったり、ソフトの間で互換性が確保されていない等広く流通するには問題点が多くあった。  Javaの場合これらの問題点の多くは解決される可能性がある。  まず、HTMLはSGMLを基本として作られており、一部に拡張機能をもつブラウザがあるものの基本的には標準化されている。  また、現在標準化が進められているHTML3.0はほとんどの拡張機能を取り入れた上にさらに高度な数式のサポートなども検討されており、これが標準化されれば、現在独自のタグを使っているブラウザもHTML3.0に統一されていくと考えられる。

     したがって、これまでのオーサリングツールと違い、HTMLで書かれた文書はどのプラットフォームのどのブラウザでも読むことができる。  さらに、主要なブラウザには無料で提供されているものもあり、大きな負担にはならない。  Javaはブラウザがサポートしておりさえすればどのプラットフォームでも実行できる言語であり、前述のようにこれから開発されるブラウザはJavaをサポートする可能性が高い。  このようにHTMLとJavaの組み合わせを使えばかなり多くの機能を持ち、安価で広い互換性を持つテキストを開発できる。

  3. ネットワークの利用
     HTMLとJavaは元々インターネットのWWWで利用するように作られているので、ローカルのHDDやネットワークで使うことはもちろん、同じ物を地域を越えて提供することができ、他県との共同でテキストを開発するといったことも可能である。  このような場合細かな内容の違いが問題になることもあるが、HTMLはごく普通のテキストファイルにタグを付けただけのマークアップ言語であり、テキストの内容は普通のエディタで簡単に修正できる柔軟性も兼ね備えている。  従来から指摘されていたように、CAIの教材を作成するのは一般に労多くして益の少ない作業である。  しかし、多くの教師の共同作業として教材が開発され、自由に流通するようなシステムがあればこの状況を変える可能性がある。

     コンピュータを導入してもそれが単なる教室内LANにとどまったのではあまり有効に活用されないのはこれまでの現状が物語っている。  しかし、コンピュータをコミュニケーションの道具としてネットワークにつないだ時多くの発展が期待できる。  例えば従来のパソコン通信でもNifty-Serveの教育フォーラム(FKYOIKIUS)「理科の部屋」では小学校から高等学校まで、物、化、生、地の科目を越え、一般の方も交えた交流が広がっている。  また、新しい教材の情報交換や流通、雑誌やテレビなど従来のメディアとのつながり等これまでになかった動きも見られる。  これらは個人的にそれぞれが自分で投資して行っている活動であるのに、かなり活発に行われているのはそれに見合う価値を見出しているからであろう。

  4. おわりに
     以上に述べたように現在では個人のレベルでのハードやソフトの面ではこのような交流をさらに広げるのに必要と思われる環境が整いつつある。  しかし、社会全体の資源としては全国的なネットワークどころか県内のネットワークすらほとんど作られていないのが現状であろう。  現行課程ではほとんどすべての教科、科目に「情報」関連の事柄が盛り込まれている。  しかし、実際に情報を教育の場で活用するためにはコンピュータをネットワークでつなぎ、コミュニケーションの道具として使っていくことが是非とも必要であろう。  教師個人の努力に頼るだけではなく、行政としてこのようなネットワークを構築していただきたいものである。

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これはWWW利用の実験のため神川 定久が作成したものです。

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