理科教育におけるJavaとネットワーク利用の可能性

(96年度全国理科教育大会東京大会意見提示最終原稿)

大阪府立寝屋川高等学校(大阪府理化教育研究会マイコン部会) 神川 定久


  1. はじめに
     昨年より、インターネットが一般に普及しはじめた。 ここではインターネットによって一般的になった技術を教育へ利用する1つの可能性を考えてみたい。  また、ネットワークの整備の必要性についても考えてみたい。
  2. 提言
    1. HTMLとJava の可能性
       インターネットの普及により、それまでは一般的ではなかったWebブラウザ等のインターネット関連ソフトも広く普及し、その機能も急速に向上しつつある。  たとえば、 Microsoft社のInternet Explorer3.0や、現在広く普及しているNetscape Navigator2.02などではブラウザの中でプログラムを動かすことが可能になっている。  もともとWebブラウザはハイパーテキストを表示できるので、この機能を用いると、ハイパーテキストとシミュレーションのプログラムを組み合わせる等といったことが可能になる。  このような機能は理科の教育にも生かせるのではないか。  また、従来コンピュータを導入してもそこで利用するソフトが高価で、必要なものを購入することができないという状況もあった。  しかし、Webブラウザなどのソフトは戦略的に非常に安価に提供されている。  たとえば、Internet Explorer3.0は無償配布であり、将来OSに標準添付されるはずである。  また、多くのシェアを占めるNetscape Navigatorは学校関係者が無償で利用することを認めている。  また、先にあげたWebブラウザ上で動作するソフトを作成するJavaの開発者用キット(JDK)も、もっとも簡単なものは無償で配布されている。  このようなものを利用すれば充分授業で用いることができるソフトを、安価に作成することも可能である。
    2. HTML・Javaとは
       HTMLはWebブラウザで用いられているハイパーテキストを記述する方法であり、インターネットで利用するために標準化が進められている。  また、基本的には普通のテキストファイルに文章の構造を示すタグと呼ばれる記号を付け加えただけなので、ワープロなどもHTMLで書き出すことができるものが増えている。  また、JavaはSun Microsystemsによって開発された言語であるが、やはりインターネットで利用するため、あまり機種に依存せず、Windows95をはじめ、UNIX、Mac OS、OS/2等の上で動作するようになっている。  文法はC++に似ているが、複雑な部分は省略されており、Basicに近い感覚でプログラムを組むこともできる。
       これらのものが安価で、標準化されているということは共通の基盤になりうる可能性を持っている事を意味する。  従来CAIのコースを組むという作業は小さいものでも非常に多くの時間を必要とする作業で、オーサリングシステムも高価であり、互換性も低いという状況があった。  もし、共通の基盤があり、基本的な部分が標準化されていれば、他の人が作成したコースを、自分の授業で使いやすいように組み替えたり、協同でコースを作成するといったことも可能になるであろう。
    3. ネットワークの可能性
       このように、コンピュータをコミュニケーションの道具としてネットワークにつないだ時多くの発展が期待できる。  上記のような教材を、教師がネットワークで意見を交換しながら開発したり、ネットワークを通じて流通させられるようになればCAI等の利用を妨げている状況を変えることもできるかもしれない。  他の面でも、例えば、従来のパソコン通信であるNifty-Serveの教育フォーラム(FKYOIKIUS)「理科の部屋」では小学校から高等学校まで、物、化、生、地の科目を越え、一般の方も交えた交流が広がっている。  そこでは、教え方に関する意見交換をはじめ、新しい教材の情報交換や流通、雑誌やテレビ、出版など従来のメディアとのつながり等、これまでになかった動きも見られる。  これらは個人的にそれぞれが自分で投資して行っている活動であるのに、活発に行われているのはそれに見合う価値を見出しているからであろう。
  3. おわりに
     現在では個人のレベルでのハードやソフトの面ではこのような交流をさらに広げるのに必要と思われる環境が整いつつある。  しかし、社会全体の資源としては全国的なネットワークどころか県内のネットワークすらほとんど作られていないのが現状であろう。  現行課程ではほとんどすべての教科、科目に「情報」関連の事柄が盛り込まれている。  しかし、実際に情報を教育の場で活用するためにはコンピュータをネットワークでつなぎ、コミュニケーションの道具として使っていくことが是非とも必要であろう。  教師個人の努力に頼るだけではなく、行政としてこのようなネットワークを構築していただきたいものである。

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これはWWW利用の実験のため神川 定久が作成したものです。

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